自宅長屋門(ながやもん)で、
建築設計事務所を営んでいる一級建築士 與那原浩です。 



今回も、
私が住んでいる妻の実家 太宰家の土間空間の小屋組(こやぐみ)
の続きを紹介します。



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小屋組(こやぐみ)にハシゴをかけて、登ってみることにしました。
吹抜けの根太天井(ねだてんじょう)から小屋組を見ています。



手前に見えるのが大黒柱(だいこくばしら)の頭部です。間近で
見ると、その迫力に圧倒されます。



小屋組に外部からの光が差し込んでいて、陰影のコントラストが
美しいです。



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            ―犬伏武彦著 【民家ロマンチック街道―伊予路】引用―


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こうやって見ると、小屋束(こやづか)
をつないでいる小屋貫(こやぬき)
がリズミカルに交差しています。



小屋梁’(こやばり)の緩やかな曲線と小屋貫(こやぬき)の直線が、
複雑な幾何学模様のように見えて、ため息が出るほど美しいです。



太宰家の大きな屋根を支えるためには、こんなにたくさんの梁や柱で、
小屋組を構成しないといけないということに、あらためて、200年以上昔の
造り手達の大変さに思いをはせています。


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クレーンもない時代に、これだけの小屋組を組む上げることが、
どんなに大変だったか・・・



静寂の中で耳を澄ますと・・・



建築中の当時の職人達が声を掛け合いながら、ひとつひとつ木材を
引き上げている様子が目に浮かんでくるようです。



驚いたことに、江戸末期に造られたこの小屋組は、今もしっかりと
バランスを保っていて、大きな屋根を支えています。



1本でも欠けたらバランスが崩れてしまう小屋組ですが、
ち密な計算で組まれているのか、完璧なバランスで配置されています。



今は、
CAD(キャド)という便利な設計ソフトで、設計や
構造計算(こうぞうけいさん)をしている私には、当時の棟梁の
完璧な構造計算にはとうてい及びません。



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長い間、小屋組の美しさに見とれていたので、下を見おろしたら、
根太天井(ねだてんじょう)から土間まで結構な高さがあることに
気がつきました。



ハシゴをかけて上ったので、カメラと三脚を抱えて降りなければ
ならず・・・・今になって足がすくんできました。
 


小屋組の配置を間近で見て、しみじみ、自分の造る家が、太宰家の
ように長い間住み継いでいかれるような堅牢さであらねばならぬと、
気持ちを新たにしました。



今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。



【建築ワード説明】


根太天井(ねだてんじょう)
民家の天井形式の一つ。2階の床組を1階の天井として現わしたもので、
根太を渡して板を張った形式のこと。



大黒柱(だいこくばしら)
古い民家などで、家の中央に立つひときわ太い柱

 
小屋束(こやづか)
小屋組を構成する部材で、梁の上に垂直に立ち、母屋と棟木を支える柱の総称。


小屋貫(こやぬき)
小屋組を構成する部材で、柱などの垂直材間に通す水平材。


CAD(キャド)
コンピューターを用いて設計することで、設計する場合は建築設計用の
ソフトを使う。 
computer-aided designの略。