自宅長屋門(ながやもん)で、
建築設計事務所を営んでいる一級建築士
古民家建築の専門家 與那原浩です。




私が住んでいる妻の実家、太宰家の
長屋門の軒を紹介します。




20090622noki
長屋門の軒下




原本★
出展:犬伏武彦著 【民家ロマンチック街道―伊予路】




梅雨時期は、長い間激しい雨が降り、湿度
も高い日が続きました。




伝統的な日本家屋の特徴の一つとして、
深い軒のデザインがあります。高温多湿な
気候の中で快適さを求めると、家は開放的
なつくりになっていきます。




そうすると、雨風などの自然から建物を守る
ため、軒を深くする必然性があった
のだと
思います。




また、日本人独特の自然との一体感を求め
るという文化的な側面も考えられます。




長屋門の軒を見ると、外壁芯より軒先瓦
(のきさきがわら)
まで、1.18mあります。
これだけ軒が深いと少々の雨は外壁にかか
ることはありません。




しかし、これだけ軒が深いうえ瓦が葺かれて
いるのに、それを支えている垂木(たるき)
が小さいと思いませんか。




実は、この軒は二重構造になっているのです
が、お分かりになりますか?

20090622noki2
長屋門中庭から撮影




正面から見ると、屋根の勾配と軒の勾配の
違いがよくわかります。

20090622noki3




軒を深くすると軒先にかかる荷重が増える
ため、屋根を支える垂木も大きくなって
しまいます。




軒を二重にすることにより野垂木(のだる
き)
や補強材を隠すことができ、軒先の
垂れを防ぐ効果もあります。




また、屋根勾配よりも緩い勾配とすること
で、美観的にも落ち着いた雰囲気となって
いるのです。
匠の知恵と技術に感心するばかりです。




最近では、新築の家は洋風外観の家が、
とても多くなりました。間口の小さな窓を
採用している家が目立ちます。外観が洋風
になることで、軒は浅くなり、中には庇が
まったくない家もあります。




「家の作りようは、夏をむねとすべし」

いう考え方が日本にはありましたが、高温
多湿の風土から考えると、従来の日本家屋
のように、軒が深く、開口部が大きく、通気
のいい家と、輸入住宅のように必要最低限
の開口部しかない海外の住宅とは、家の
つくりやコンセプトが大きく異なります。




軒や庇が果たす重要な役割としては、少な
くとも4つの大きなメリットがあります。




①夏の日差しを防ぐこと。

ここのところ記録的な暑さが続いています
が、軒の深さが暑さ対策にも効果絶大です。
夏は太陽の位置が高いので、軒や庇に
よって、厳しい日差しを遮ることができます。




②冬の暖かい日差しを取り込むこと。

寒い冬は、太陽が低い位置を通るため、軒
や庇があっても、日差しは室内まで入り、
暖かな日射を取り込むことができます。




③雨が直接建物に降りかかるのを防ぐこと。


雨水は、建物の寿命に大きな影響を及ぼす
ことになるので、雨仕舞いはとても重要
です。外壁材と外壁材のつなぎ目、窓の
周囲、屋根の谷あたりから、雨漏りしたり、
雨水が入り込むケースがよくあります。




④壁を雨水から守ること。

雨量の多い日本では、壁に直接雨水が当た
らないように、軒や庇で雨水を遮ってきま
した。軒が浅くて、雨水がよく当たる壁は、
数年で藻が発生し、緑色の壁になってしま
います。壁を傷ませないためにも、雨水を
遮る対策が必要です。




日本家屋の深い軒は、デザイン的にも機能
的にも優れているということが分かります。
その土地の風土にあった建築様式にする
ことが、家を丈夫に長持ちさせるコツです。




最後に、動画もご覧ください。








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今日も最後まで読んで頂き、ありがとう
ございました。




【建築ワード説明】


軒先瓦(のきさきがわら)
軒先を葺く瓦のことで、水切りがよいように
垂れが付いている。


垂木(たるき)
垂木とは母屋に固定された屋根の骨組み
で、野地板を固定する役割のこと。


野垂木(のだるき)
化粧垂木(けしょうだるき)の上にあって、
屋根を支えている垂木で、下からは見え
ない。